真夏の雨






「アトベくんの名前、覚えられないんだよねー」

おどけて言えば、君は少しさみしそうに笑った。

ほんとは嘘だよ。

覚えられないんじゃなくて、覚えないようにしてるだけ。

だってほら、この身体中に刻み付けてしまったら、君を呼び続けてしまうから。




真夏の雨の中佇んだその姿を、見つけてしまったのは何故?

家に引っ張り込んで、風呂に入らせて、リビングへ招いて。

コーヒーカップの上で指先が触れ合う。

そのまま手をとって、引き寄せて、そっとくちづけでもいいですか?




「もう、ここでいい」

「いいよいいよ。どうせ暇だし」

静かに突き放そうとする君には気付かないフリ。

言葉も無いままプラットホームに立つ僕ら。

「明日は晴れだな」

雨はすっかり通り過ぎて、星の瞬く空を見上げて、君が呟いた。

生温い風が吹く。

隣の髪から、同じシャンプーの匂いがして、どうしようもない。






「ありがとう、千石」





閉まった扉、その向こうで微笑む君。







もう一度風が吹いた。



次に会った時は、

次に会った時は、期待してもいいですか?














そうして僕らはまた出会う。









茜色の街。茜色の君。

ただ、その眸は青いままに。




「景吾!」





振り向く君、青い空は僕を映さない。

「昨日は、悪かったな」

「気にしないで」


小さくなる背中。










「けいご」







微かな想いは車の音に掻き消され。





昨日の風が雨の匂いを攫ったように、

僕も君を攫ってしまえばよかっただろうか。






君の天気予報ははずれだね。




僕の心はどしゃぶりだ。






またやってしまった…せんべ好きなのになんで悲恋になるの!?
元ネタはくるりの「真夏の雨」。ふうたに歌詞を教えてもらって、たまらなくなって10分くらいで殴り書いたもの。
くるりファンの方すみません…!曲の雰囲気ぶち壊してしまってるYO
この曲を知らない方も、すみません…きっと意味不明ッスよね!(物書き失格)
火炎瓶だけは、火炎瓶だけは投げこまないで!

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2005.04.27 涼河