08:優等生と劣等生
「自分、人生損しとるよ」
完璧な笑顔で忍足は言った。
笑顔の教科書なんてものがもし仮にあったのならば、彼の笑い方は教科書通りのそれに違いない。
「せっかく別嬪に産まれてきたんやから、にこにこ笑うてれば、大抵の事は上手くやり込められんねんに」
なぁ、
そないに正直に生きて、アホらしいと思わへんの?
優しい優しい微笑みで、ひとを嘲るそのアンバランス。
ああ、わかるさ。このどうしようもなくくだらない世界で息をしている以上、優等生はお前なのだと。
それでも俺は、
「お前みたいな最低な奴に成り下がるくらいなら、損してでも俺らしく在る方が、何千倍もマシだ」
俺は劣等生で構わない。
なぁ、どの世界でも、最期に勝つのは劣等生なんだぜ?
優等生のお前なら、わかるだろ?