LOVE FIGHT! Highlight
季節は秋。夏に引退した3年生から、部を預けられて数ヶ月。
氷帝学園中等部テニス部は、男子の部長を忍足侑士、女子の部長を跡部景吾とし、日々練習に励んでいる。
そんな日常のお話。
毎日毎日、忍足が跡部に交際を迫っているのは周知の事実だが、当の跡部本人はこれを本気にしておらず、
「アイツは俺をからかってるだけなんだよ!」
と豪語して退かない。
それでもまだしつこい忍足に、跡部は咄嗟に嘘をついてしまったのである。
もう自分には彼氏がいるのだ、と。
当然信じない忍足は、それなら日曜に、彼氏も一緒に遊ぼうと提案してきた。
断れるはずも無く、絶体絶命のピンチに陥る跡部。
その日の放課後、ファーストフード店で、宍戸と岳人を巻き添えに悩んでいた跡部の目に、一人の少年が映った。
白ラン姿も眩しい、山吹中2年男子テニス部部長、南健太郎。
なんと、彼は跡部の従兄弟だったのだ!!
跡部は、気心知れた、その上イケメンである従兄弟の南に、彼氏のフリをしてもらうことに決めたのだった。
作戦はまんまと成功し、忍足は南を跡部の彼氏だと思い込んだ。
ショックが大きく、ちょっぴり弱気になった忍足にかかる、少年の声。
「じゃあ俺が奪っちゃうよ?」
忍足にとって最も厄介な人物。
同じテニス部の実力者にして跡部(と宍戸)の幼馴染、芥川慈郎の参戦である。
こうして、忍足と慈郎による跡部景吾争奪戦の幕が切って落とされた。
一方、南の通う山吹では。
「カレシのフリをしてくれ」と頼まれ、南は複雑な心境だった。
実のところ、南は幼い頃からずっと、跡部に恋をしていた。今回の件は、南に、純粋な喜びと切ない辛さをもたらした。
悩める南にいち早く気付いたのは、山吹中2年男子テニス部のエース、千石清純。
うまい具合に南を口車に乗せ、千石はまんまと、南の彼女の顔を拝みに行くことに成功する。
而して南が向かったのは、名門・氷帝学園。
地味ーズ南の彼女が氷帝生であることに、少なからずショックを受ける千石の前に、いよいよ跡部が現れた。
完璧なまでの、天使のような美貌(千石曰く“スーパーウルトラ美人”)と、激しく女帝気質な性格。
千石は、一瞬にして恋に落ちた。
千石のおかげで、もうひとつの問題が生じたことに、当然千石本人は気付いていなかった。
氷帝にやってきた南と、慈郎が顔を合わせてしまった。
二人は幼い頃に、跡部を通じて面識があったのだ。
慈郎はすぐさま結論に至った。
跡部と南は偽装カップルだ。
しかし、彼はこの真実を、忍足に告げなかった。
南はフェイクだとわかった以上、目下の強敵は忍足である。
敵に塩を送るなどという馬鹿げた行為を、慈郎はするつもりはない。
こうして、跡部が最も危惧していた、忍足に真実がバレる、という事態は回避できたのだが――
恋人がいるとわかっても尚、構ってくる忍足に、跡部の心は揺れ動く。
もしかしたら忍足は、本気なのかもしれない…そう思い始めた跡部。
だが、忍足は、跡部の目の前で、岳人と無邪気に笑い合った。
他の女の子にも、跡部にも見せたことのない、楽しそうな、それでいて優しい笑顔で。
そうして跡部は悟る。
忍足が本当に好きなのは自分ではない。
向日岳人なのだ、と。
*****
「ここんとこ最近、おいてかれた気がしてた」
慈郎はそっと想う。
幼馴染の跡部と宍戸が、自分から離れていく。そんな予感に捕らわれていた。
けれど、
「俺も、亮も、どこにも行かないんだぞ」
二人とも、これからも傍にいてくれるのだと解ったから。
二人とも、昔と変わっていないと感じることができたから。
三人で並んで歩けることを、跡部の隣にいられることを知った慈郎は、決意をした。
跡部への恋心を、ここで絶とう。
彼女の幸せのために、自分は、幼馴染として、誰よりも彼女の味方であり続けよう。
そして、春が巡り来る。
彼女達は3年に進級し、この話はまた、新たな物語へと続くのである。
Go ready? →ROUND15:進級
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