「ホラァ、侑士、急いでや〜!」 「そんな急がなくたってええやん。」 今日は、夏祭り。 恋人となら、楽しいかもしれない。 しかし、忍足侑士の腕をぐいぐいひっぱる彼女は、恋人ではなく、忍足の姉である。 (我ながら情けない…。) カレシとケンカしたとか言って、姉が忍足のアパートに転がり込んだのが1週間前。 そろそろ帰ってくれないかな、という弟の密かな願いは、夏祭りによって打ち砕かれた。 「東京の祭りは活気がない」と言う割に、楽しそうな姉。 忍足は、姉に気づかれぬよう小さく溜息をついた。 * * * 「花火見ないで帰るか?」 南健太郎がそう尋ねた相手は、うつむいたまま首を横に振った。 下駄に慣れないらしいその少女は、歩くのがやっとのようである。 その様子を見て、南は「大丈夫か」と訊こうとしたが、 負けず嫌いの彼女の返答は容易に想像できたので、やめた。 今日は従兄弟同伴だから、と言ってやっと許してもらえた外出である。 南のほうとしても従兄弟の少女を――跡部を、最後まで楽しませてやりたかった。 「ホラ。」 気遣いの言葉の代わりに手を差し出されたその手は、しっかりと握られた。 * * * 「アンタがノロノロしてっから場所とられてもぉたやん。」 「……。」 何か言ったらまた言われるだろうから、何も返さなかった。 というか、言っても聞いていないだろう。 忍足姉は、打ち上げが始まった花火に夢中であった。 姉につられて、忍足も空を見上げた。 特等席はとられてしまったようだが、ここからでも十分に楽しめる。 姉とこうやって花火を見るのも最後かもな、と思った。 「見えるか?景。」 不意に、聞いたことのある名が忍足の耳に入った。 「ああ。」 続いて、聞き覚えのある声も。 何人か挟んで隣の方から聞こえたその声の主たちを見るために、 忍足はそちらに顔を向けた。 「あ」 南と跡部が一緒にいたのだ。 時々顔を見合わせては、楽しそうに話している。 視線を下におろすと、2人は手を繋いでいた。 (そういうことだったんか。) 跡部を祭りにしつこく誘っても断っていた理由がわかった気がした。 浴衣姿の跡部は、いつもとはまた違って、美しくて。 (なんや、フランス人形が浴衣着てるみたいやなぁ。) そんなことを思った。 忍足だって跡部の手を握ろうとしたことはあったが、それは拒絶された。 それに、あんなに柔らかな笑顔を向けられたことも無い。 それが、とても、悔しくて。 (こんな気持ち、花火と一緒に空に散ってしまえばええのに。) 夜空に輝くスターマイン。 嗤う天。 end. はいどーもー!図々しくサイトに居座ってる裏方Fだよー!!(キャラ違うっつか誰だお前。) えーと、先日、キリリクやってないよね、という話に(今更)なりまして、 2つ未消化リクがあったので、分不相応ながらも私が1つ消化させていただきました…スイマセン。 リクして下さった方、まだサイトにいらっしゃってるのでしょうか?? 本当にごめんなさい、今更ながら消化させていただきました。 書いてるうちにゴロンゴロン話の内容と方向が変わってしまって…すいませんホント…!! タイトルは「ワラウソラ」と読みます。涼河に考えてもらいました。 この話は、そろそろ絵を描かないとイカンと思っていて、その下絵から引っ張ってきました。 絵は、後日…!(色々グダグダすぎて駄目だー;) つか、昔、涼河と祭りに真田が来てたらキモイよねとか言い合った気がします。 実際、祭りで真田に会ったら嫌だなと思いました。 真田ファンの皆様、申し訳ございません。 これでも真跡イケます(ねじ曲がった愛情) 06/07/25 裏方F(謝りだおしたい) |