「大丈夫、好きな人なんて、いないよ。」


心臓が壊れてしまったんじゃないかと思うくらい、胸が痛かった。


★ ROUND17:Indian Strawberry ★


目の前の青い目の少女は、安堵のため息をついた。
「景こそ、いないのか?」
会話の流れが不自然にならないように、自分の本当の気持を隠すように、南は訊いた。
跡部の答えはというと、
「そんなもん、いたらとっくに手に入れてる。」
と、なんとも跡部らしい答えが返ってきた。
南は「今はお互いテニスが恋人だな」と苦笑しながら言って、自分の気持ちを奥に奥にしまった。

その後、カフェを出た二人は駅に向かった。
新宿のシアターでやっている映画『INDIAN STRAWBERRY』というのが面白いらしい。
「あ。」
駅の前まで来た跡部は、駅の出入口にいる人の中に、見知った顔を見つけた。
「岳人。」
「あ、景!!と…イトコの。」
岳人は南に気付くと、南にペコリとおじぎした後、跡部に言った。
「偽装もタイヘンだな。」
「完璧な偽装だろ。」
「それは侑士に訊いたらどう?」
「訊いてたまるか。」
それより―― と跡部は話を切り替えた。
「岳人、お前なにやってんだ?」
すると岳人はニヤリと笑って答えた。
「逃げた方がいいよ、もうすぐ侑士が来るから。」
跡部は「忍足」という単語にピクリと眉を動かせた。
跡部が無言のままだったので、岳人は続けた。
「今日遊ぶ約束してんだ。」
そう言った岳人の顔はとても嬉しそうだ。
跡部はというと、少し不機嫌そうな顔になった。
岳人が忍足と仲良くしているのを見るとムカつく。
理由はわからない。
忍足が跡部のことを好きだと言ってからかっていると感じるからか。
それとも、岳人が跡部が忍足のことを嫌っているのを知っていてわざと仲良くしているんじゃないかと思うからか。
ムッとして、跡部は強く冷たい口調で言った。
「遊んでばっかりいるとレギュラーから落ちるぞ。」
「なんだよ、景だって遊んでんじゃん!!」
「うるせぇ、じゃあな。」
吐き捨てるように言って、跡部は駅の構内へ行ってしまった。
南は少し驚いた様子だったが、慌てて跡部を追い掛け、構内へ消えた。
残された岳人は、口をとがらせて呟いた。
「なんだよ、イライラしちゃってさ。」

その後の映画は、正直内容はほとんど覚えていない。
跡部は南と跡部邸の前で別れるまで機嫌が悪く、南もさわらぬ神に祟りなしでいつも以上におとなしかった。
跡部自身、何故こんなに気持ちがかき乱されるのか、全くわからなかった。
分からなくて、また苦しんだ。
岳人のことは好きだし、友達だし。
なのにあんなにイライラする。
そんな岳人と忍足は仲がよくて。
二人は付き合ってるんじゃないのか?
そんなこと跡部には関係なかったが、そう思うと自分がどうかしてしまいそうになった。



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ワラウソラ跡部sideと同じ系統の話…;
同時進行だったので、かなり困りました。
こっちでコレ使ったらあっちでコレ使えない、あっちはアレだったからこっちはコレだけど話がおかしくなる、しかし逆はちょっと…って(苦笑)
なんて発想とボキャブラリーが少ないんでしょう!!
日本人かどうか疑わしいレベルです。

"indian strawberry"は「蛇苺」の英語ヴァージョンらしいです。
着メロサイト(?)に同名のサイトがあるようですが、全く関係ありません。
跡部の岳人に対する感情は、嫉妬に似たようなものかな?と勝手に解釈し、
蛇=嫉妬とし、前ROUNDのタイトルを踏まえまして、蛇苺となりました。

そういえば岳人と忍足は2人でなにやってんだ!って間違われますよね。
私もよく間違われていました。仲がいいだけなのさ!

06.09.14 裏方F