突然学校を抜け出してしまうなんて、 自分でもどうかしていると思う。 ほんと。 どうかしているんだ。 最近の俺様は。 ★ ROUND21:不可解な気持ち ★ 翌日登校すると、亮が心配そうに駆け寄ってきた。 「何度も電話したんだぜ。」 そういえば着歴が何件もあったような気がする。 昨日は帰ってすぐそのまま寝てしまい、あまり覚えていない。 「すまない。大丈夫だ。」 抑揚のない声で答える。 昨日のことは思い出したくない。 「体調不良で帰ったことになってるから。」 亮は小さくため息をついてから小さな声でそう言うと、 「アップしてくる。」とそばをはなれていった。 亮を追った視線の先に、ワインレッドの髪――岳人がいた。 ふと目があう。 「昨日はすまなかった。」 とか、 「怪我はなかったか。」 とか、色々思い浮かぶ言葉はあった。 が。 「お前も早くランニング行ってこい。」 口から出た言葉は、自分が思っていたよりもはるかに冷たく響いた。 岳人は見るからに不服そうな顔をしたが、宍戸を追いかけて行ってしまった。 その態度にまた怒りを覚える自分に気づき、軽く舌打ちした。 ほんと、どうかしてる。 昼休み。 顧問である榊に呼び出された。 昨日の件かと思ったが、 榊も亮やハギが上手く騙してくれたようで、 健康管理に関する軽い注意を受けただけであった。 「先生、用件は以上でしょうか。」 そう聞くと、榊は「いや、あと一点…」と言って職員室のドアの方を見た。 榊がドアの方を見ると同時に、タイミングよく入ってきた生徒がいた。 その姿が誰であるかを認めると同時に、自分の鼓動が早くなるのを感じた。 また、血が逆流するかのような感覚。 それでいてかすかな恐怖感。 昨日、自分に向けられた彼の瞳を思い出す。 とっさに視線を逸らした。 「遅れてすんまへん。」 忍足は、そう言って跡部の隣に並んだ。 榊は脚を組みなおし、「急だが―」と前置きをし、話し始めた。 「今週の日曜、練習試合がある。相手は男女共に山吹だ。」 「そらまた…急ですね。」 忍足は「山吹」という単語に少々驚いた様子だった。 大会間近に、こんな練習試合が組まれることは滅多にない。 「急なのは相手も同じだ。負けは認めん。相手の出場予定の選手のリストだ。」 榊は跡部と忍足にそれぞれ選手のリストを渡すと、いつものキメ台詞を言った。 「以上だ。行ってよし。」 いつもこんな感じの榊は、部活の顧問というより、どこかの国の王様みたいだ。 相手にモノを言わせない榊を前にすると、自分がただの一兵隊のようにに思えてくる。 だからこそ、異常なほど勝利に貪欲になれるのだが。 「いい練習になります。ありがとうございます。」 跡部は榊に頭を下げると、早足で出口に向かった。 忍足の側から、一秒でも早く離れたかった。 リストに目を通していた忍足は、出て行こうとする跡部に気づくと、慌てて跡部を追った 「ちょお待てや、跡部。」 跡部は忍足の声が聞こえないフリをして廊下をどんどん進んだ。 後ろではやや大きめの声で跡部を呼ぶ声が聞こえる。 跡部は、グサリグサリと、心臓を刺すかのような感覚を覚えた。 今、世界で一番聞きたくない声だ。 「跡部!」 階段の踊り場にさしかかったところで、跡部の進路は忍足によって遮られた。 「聞こえてたんやろ、止まれや。」 明らかに不愉快そうな顔を浮かべる跡部に、忍足の顔も歪む。 「昨日はどうしたんや、岳人と何かあったんか。」 「……」 跡部はただ忍足を睨むだけで、何も言おうとしなかった。 目の前の男は、いつも自分に言い寄り、そのくせ岳人を大切にしている。 なにが「好き」だ。 自分のことを好きだの綺麗だの言ってくる忍足と、 岳人と楽しそうに談笑している忍足が交互に目に浮かんだ。 なぜだか胸の真ん中が、ズキズキと傷む。 それと同時に、自分をその辺の軽い女と同レベルに扱う忍足に、腹が立った。 何故こんな思いをしなければならないんだろう。 こんな、こんな気持ち。 どうにかなってしまいそうなほど、苦しい気持ち――― 忍足は、何も言わない跡部にため息をついた。 「あんなぁ、跡部、岳人は…」 『岳人』という単語が、妙にハッキリと跡部の耳に届く。 それと同時に、跡部は低く冷たい声で、忍足の言葉を遮った。 「黙れ。」 「な…」 跡部のいつもに増して強い語調に、忍足は言葉を飲み込んでしまった。 跡部は、震えてしまいそうなのを必死に抑えて掴みかり、そのまま忍足を壁に押し付けた。 「テメェ見てると吐きそうになんだよ。」 決して大声ではなかったが、十分なほど迫力があった。 「そのツラと関西弁で女落とせると思ってんじゃねぇ。」 こんな言葉、両親が聞いたら卒倒寸前だろう。 自分でもどこからこの言葉が出てくるのかわからない。 「俺様はテメェの言うことほいほい信じるほど馬鹿じゃねーんだよ。」 というか、理性がブッとんでる。 「岳人のことが大事なら、素直にそう言えよ。振舞えよ。」 そう言ったと同時に、忍足に掴みかかった手の力が弱まった。 痛かったんだ。 胸の真ん中が。 引き裂かれそうなくらいに。 「もう、」 「もうこれ以上俺様に近づくな…」 唖然とする忍足をふたたび睨みつけると、そのまま立ち去った。 視界がぼやけて足元が見えない。 怒りは収まったが、今度はなにか他の気持ちが己を占領していた。 素直に吐き出したのに。 こんなに辛いのは初めてだ。 なんだろう。 この気持ちは。 イライラと、ズキズキと。 ほんと、 ほんとどうかしてる。 ほんとうに。 ★ ROUND(次) ★ ROUND(前) ★ LF!top ★ プロペラcontents ★ あとがき やっべ、私自身は跡部様とは似ても似つかないタイプだから、 どう書いていいのかわかんない。 想像力なさすぎて跡部様がどう感じるかとかわかんない。 おぼおぼぼぼぼぼお あと日本語力が日に日に落ちてて悲しすぎる。 涼河ごめん。。。 控えめにバトンターッチ… どうでもいいけど、脚を組みなおす43を想像すると吐ける。爆死 08.10.21 F |