★ ROUND3:幼馴染は常習犯? ★
一時間目終了後の休み時間。
一つ後ろの席で、窓から吹くそよ風に髪を乱されながらすいよすいよと眠るジローを見つめて、跡部はそっと苦笑した。
朝練の時女テニのコートに乱入し、あまつさえ忍足と騒ぎ立てて跡部にこっぴどく叱られた事なんて、もうとっくに夢の向こう側なのだろう。
「・・・ったく。ぐしゃぐしゃだぞ」
細長く形の良い指でジローの柔らかなタンポポ色の髪を梳く。
穏やかな顔で眠るジローと、そのジローの髪をこれまた穏やかな顔で弄ぶ跡部。窓から注ぐ淡い日差し。
教室の喧騒の中、二人の周りだけ違う空気が漂っている。
さしずめ天使と聖母といったところか。
そこだけが一枚の絵画のようだった。
ふんわりとした雰囲気に、クラスメイト達も頬を緩ませた、その、直後。
ぴしり、と。
跡部から氷点下の冷気がほとばしった。
それはみるみる教室を凍らせていく。
「・・・ジロー」
「・・・ぐぅー」
「ジロー!!てめぇなにやってやがる!」
大きな音を立てて椅子から立ち上がった跡部は、ジローの襟を引っ掴んだ。
机に突っ伏していた上体を無理やり起こされて、髪と同じタンポポ色の眉と眉の間に皺が寄る。
「スカートの中に手ぇ突っ込むんじゃねーっていつも言ってるだろうが!!」
「えーだって・・・景ちゃんの太もも柔らかくて気持ちいいんだもーん・・・」
爆弾投下。
「ッ!!!寝るな!うらぁ!」
気合とともに、跡部の細い腕がジローを床に引きずり落とす。
その上に馬乗りになって、跡部はジローの顎を指先で軽く持ち上げた。
「今度やったらオシオキだって言ったよなぁ?あーん?」
「け、けぇちゃ・・・腹に乗んないで・・・窒息する・・・!!」
「今日は絶対許さないからな!」
「やるねー」
「・・・滝・・・・」
凍りつくクラスメイト達の中で、滝だけが楽しそうに微笑んでいる。
隣のクラスから顔を出した忍足が、今現在の状況(跡部がジローを押し倒して迫っているようにも見える)を見て発狂するだろうことを想像して、岳人は深くた
め息をついた。
「あーあ・・・荒れるぞ・・・」
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*補足*
跡部・ジロー・岳人・滝の四人が同じクラス。
忍足と宍戸の二人は、四人の隣のクラス。
偶数担当は涼河です。
引き続き氷帝サイド。
なんべを待ってくださっている方、申し訳ありません;
ふうたのために(笑)ジロにスポットをあててみました。
……ってセクハラさせてるし!!(爆)
2005.01.13