★ ROUND7:それぞれの ★


[side:跡部]


「なんだ、芥川はまたサボリか?」

教師のその言葉で、後ろの席の主がいないことを跡部は再認識させられた。
昼休みになっても決着がつかなかった鬼ごっこ。
忍足は5時限目開始と同時に自分の教室に逃げ込み、ジローはそのままどこかに走っていった。
今朝からずっとジローと忍足ごときに振り回されている自分が嘆かわしい。
5時限目の授業を受けるために教室に戻ってきた跡部を見て、岳人が「もうやめたら?」と言ったが、そうはいかない。
ジローには「今度こそ許さない」と言ったからには許したくないし、
忍足はこの辺でシメておかないとさらに調子にのるに違いないのだ。

ぜ っ た い つ か ま え る !!

そう跡部は心に誓った。
が、こう血が上った頭では授業に集中できない。
そう思い、集中しようと軽く頭を左右に振った跡部の視界の隅っこに何かが映った。
気になって視線をそちらに向ける。
すると、
中庭の一番大きい木の根元、
跡部の心とは裏腹に、のんきに日向ぼっこを楽しむヒツジが1匹。

(アイツあんなトコにいやがる…!挑発のつもりか?!)

今すぐ捕まえたい衝動を抑え、必死に心を落ち着かせようとしたその時、ジローと目が合った。
ジローは跡部に向かって嬉しそうにニッコリ笑って手を振る。
ふわふわの笑顔は春のよう。

(…ッあのヤロー。)

怒りが和らぎかけた…のは気のせいだろう。
『そこで待ってやがれ。』
口パクでそう言うと、跡部は黒板の方に向き直った。

(…とりあえず、ジローはゲンコツ1回で許してやるか。)

5時限目終了まであと40分。





[side:忍足]


「よし、正解だ。忍足、戻っていいぞ。」

忍足には簡単すぎて退屈な数学の授業。

(やってられへんわ〜自習のほうがマシ。)

自分の席に戻ってふと中庭に目をやるとそこには…ジロー。
(アイツ今日1日サボるつもりかい…。
ちゅーかジローは跡部のこと本気なんか?

ジローがいなけりゃこの鬼ごっこ(?)も完璧なんやけど。)

そのままジローを眺めてたら、ジローは閉じていた目を開いて忍足の方を見てきた。
そして何を思ったか忍足に向かってピースしてきた。

(……!なんやアレ?景ちゃんは俺のモンだとでも言いたいんか?!)

忍足は『覚えてろ』と、首を切るジェスチャーで返す。
するとジローはまた目を閉じて眠ってしまった。

(無視かい!!…このクソつまらん授業終わったら決着つけたる。)

そう決心すると、退屈な授業に心を戻した。
5時限目終了まであと20分。







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あらら、書き直したら長くなってしまいました…;
そんなワケで元々存在しなかった[side:ジロー]は別腹でドウゾ(笑)
1つ前のROUND6からオフ本に未掲載の分なんですね…。
オフにしたのは、オフにする時に涼河とタイトル決めた(と言うか決めてもらった)のでよかったんだけど、
この回はそうもいかないC…?
よくよく考えれば15話以降は常に自分で決めなきゃならない…。
おそ、おそ、おそろしい…!!

05.01.23  ふうた